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オプトジェネティクス:光遺伝学(Opto Genetics)とは?


オプトジェネティクスとは?

一言で言うと、「脳のニューロンのはたらきを電極の代わりに光によって制御する研究」のこと。

もう少し詳しく言いますと、オプトジェネティクス:光遺伝学(OptoGenetics)とは、光で活性化するタンパク分子を遺伝学的手法で特定の細胞に発現させ、その機能を光で操作する技術の総称です。光(opto)と遺伝学(genetics)を組み合わせたことから光遺伝学と呼ばれています。光遺伝学の開発により、特定の神経の活動を高い時間精度で正確に操作することが初めて可能となり、神経活動と行動発現とを直接繋げることが可能となりました。
2000年以前、神経活動の操作手法として、電気刺激による神経活動の活性化が主に用いられ、電気刺激とそれに伴う行動の変化から、その電極近傍の神経の生理的役割が解析されてきました(電線が沢山繋がったヘルメットのようなものをかぶった被験者の写真を見たことがありませんか?)。しかしながら、電気刺激は特異性が低く、電極の近傍に存在する軸索や細胞体を非特異的に活性化してしまうという難点がありました。また、脳深部電気刺激等の手法を用いた場合、局所の神経細胞を刺激していることが有効なのか、それとも抑制していることが有効なのかメカニズムが分かりませんでした。一方、作動薬や拮抗薬等の局所投与などの薬理学的手法は、神経の活性化と抑制の両方が可能ですが、時間的精度が低く(何時、薬の作用が効いてきたのかはっきりしない)、細胞特異性、シナプス特異性も制御できない等の欠点がありました。さらに、特定の遺伝子欠損動物の行動解析では、発生過程における影響や他の神経による機能補償などが起こっている可能性を払拭することができませんでした。
この問題を解決したのが、2008年、ノーベル化学賞を受賞した下村脩(しもむら・おさむ)博士が発見した緑色蛍光タンパク質(GFP)です。多くの研究グループが、GFP遺伝子を加工して、神経伝達物質や電圧、カルシウム濃度などの変化を検出できるさまざまな光感受性タンパク質を作り出しました。これらの分子をニューロンに組み込み、光を発する分子センサーとして用いることで、神経ネットワーク内の情報処理を追いかけることができるようになりました。
Hagemannがチャネルロドプシン1を発見したのが2002年、Naイオンを通すチャネルロドプシン2(ChR2)の発表が2003年。これらの成果に基づいて研究が進められ、実用化の論文が、2005年、Deisserothらから発表されました。ChR2cDNAを、あたかもGFPを発現させるかのように利用して発現させれば、特定の新生細胞の活動を光で選択的に操作できるということが判明しました。
即ち、光遺伝学を用いれば、それまでの電気刺激による方法や、薬理学的手法では困難であった、マイクロ~ミリ秒オーダーの神経活動の活性化あるいは抑制が可能であり、特定の神経活動のみを制御できる事が分かったのです。これによって自由行動下の動物、"Free Moving Animal"、において、特定の神経活動のみを制御することが可能になりました。どの神経が光ったときに動物がどのような行動をしていたのか、即ち、神経の発光位置と行動の関係性が、がはっきりと結びついたのです。このように、光遺伝学は脳神経科学分野の新手法として非常に大きなインパクトを与え、2010年にNature publishing groupによって全分野の中から、最も優れた研究手法としてMethod of the Yearに選定されました。

  • 電気刺激の図

    周辺の細胞体、軸索共に活性化

  • オプトジェネティクス光刺激の図

    特定神経のみ活性化あるいは抑制